「夏への扉」ロバート・A・ハインライン

世界中の猫好きへ贈る 不朽の時間旅行SF名作

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          ピート!!


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      たま!!(笑)


 日頃本選びの参考にさせていただいている「とにかく読書録」で最近紹介されていた本です。
 時代小説・警察小説系統のレビューが多い同ブログですが、たまにイレギュラーで紹介される異種系統も当たりが多いので、要チェックです。本作なんて存在さえ知りませんでしたが、ひと目みただけでピンときました。
 もっとも私が知らなかっただけで、1957年にアメリカで刊行されたロングセラーのSF小説で、おそらく世界中の方々に読まれているだろうと思います。古さをまったく感じさせないので、これからもずっと読まれていくはずです。

 あらすじ。
 1970年、核戦争後のアメリカ。30歳の産業技術者ダン・ディヴィスと9歳の牡猫ピートが主人公。
 自動掃除機などを発明し、親友のマイルズと立ち上げた会社で成功を収め、ベルという美しい婚約者を得て幸せの絶頂にいたダンだが、マイルズとベルに騙され、会社から追放された。
 失意のどん底にいたダンは、現世に嫌気が差し、5年前に開発された冷凍睡眠(コールドスリープ)によって30年後に蘇生することを決意する。たったひとりの相棒、猫のピートも一緒にだ。残った財産は仲の良かったマイルズの継娘リッキィに贈与する手筈を整えていた。リッキィはマイルズの前妻の娘でダン以外にピートが唯一なついている人間だった。
 しかし施行前日にこのままでは腹の虫が収まらなくなったダンは、裏切り者のマイルズとベルの邸宅に向かい、怒りをぶちまける。ところが間抜けにも反撃され、毒婦ベルに薬物を注射されてしまう。さらに飼い主を守ってひとりで戦ったピートとはぐれてしまった。薬物のせいでベルのいいなりになったダンは、契約した冷凍睡眠施行業者とは違う業者によって30年後の2000年までコールドスリープされ、目覚めたロサンゼルスではベルの奸計のために無一文になっていた。
 西暦2000年の世界、そこは言葉も少し違い、着る服も違い、経済感覚は異なり、科学技術は飛躍的に進歩していた。1970年では優秀な技術者だったダンだが、浦島太郎になってしまったそこでは、時代遅れの職工だった。
 自動車のスクラップ工場に職を得たダンは、今もどこかで生きているであろうマイルズとベルに復讐の念を燃やす。
 愛猫ピートのためにも、あのふたりだけは許さない・・・

 とても50年以上昔の小説とは思えません。
 みずみずしい。
 文化女中器って、今のルンバですよね!?
 発想というか、感覚が素晴らしいなあ。
 冷凍睡眠やタイムマシンのからくりも、十分に納得がいくものでした。
 SF以外の物語の骨格もしっかりとしているために、じっくりと読み応えがあります。
 でも、猫好きの私が一番好きなのは、冬にピートが扉を開けてもらって夏を探すシーン。
 あそこがこの小説の一番の核であり、SFにプラスされた何かを本作に感じさせる所以になっていると思います。
 見開きの「世のなべての猫好きにこの本を捧げる」は伊達ではありません。
 捧げられました。謹んでお礼を申し上げます。ありがとうございました。


 






 

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「サイコパス」中野信子

 怖い。ぞっとした。これ読むと気軽に人と付き合えないわ。
 サイコパス。
 多くの方が一度は聞いたことがある単語ではないでしょうか。
 ハンニバル・レクター博士を連想する方もいらっしゃるでしょう。
 実際、元々は「サイコパス」とは連続殺人犯などの反社会的な人格を説明するために開発された診断上の概念で、日本では「精神病質」と訳されてきました。精神医学の分野では「反社会性パーソナリティ障害」という診断基準に含まれます。
 しかし、必ずしもサイコパス=犯罪予備軍ではないのです。
 サイコパスの誰もが殺人犯になるわけではないのです。
 リスクに直面して不安や恐怖を感じず、感情が希薄で、共感性が低く、平気で嘘をつくなどがサイコパスという個体の特徴ですが、実業家や弁護士、外科医など社会的地位の高い人に多いとも言われています。
 不安や恐怖を感じることがないのでハイリスクハイリターン的な勝負をするため経済的に成功を収めた方もたくさんいます。一方で莫大な借金を抱えて破滅する方もいます。サイコパスは人のわずかな表情から感情を読み取ることが巧みなので人を騙すことに長け、誰もを引きつける弁舌の才能があります。政治家にも多いことでしょう。ジョン・F・ケネディやビル・クリントン、スティーブ・ジョブズもサイコパスだったのではないかと言われています。織田信長もそうだったと、著者がテレビで言っているのを観たことがあります。意外なところでは、あの聖人マザー・テレサも。
 今ワイドショーでバタバタしている某神戸市義も私はクサイと思う。
 驚くべきことに、程度はともかくとして、なんと100人に1人はサイコパスである可能性が高いそうです。
 これは、そのへんにいるということだよ。私やあなたの周りにきっといる。サイコパスは社会を成す一員なのです。
 言うことがコロコロ変わり、やたら威張り散らし、会社という共同体からどこか浮いているような閑職の男性上司がいませんか。高い確率でその方はサイコパスです。サイコパスは女性よりも男性の方が圧倒的に多いそうです。

 サイコパスの特徴のひとつとして、まばたきが少ない、そして心拍数が少ないことが挙げられます。
 心拍数が少ないということは、びっくりしないということなんですね。だから感情が冷たい。
 サイコパス特有の脳の器質的な研究も進み、扁桃体など大脳辺縁系の異常や扁桃体と前頭前皮質の連携が一般人と比べて弱いことが明らかになり、このことが共感性の弱さや道徳観の低さに関係していると言われています。
 普通の人ならば犯罪を犯すことにためらいがありますが、サイコパスはそういう不安を抱きません。
 理性的には善悪の区別がつくのに、情動のレベルでは犯罪行為が道徳的に間違っていることがわかりません。
 例を上げるならば、ある集落に殺人者の集団が襲ってきて、集落のみんなが一箇所に固まって隠れているとします。そのとき赤ちゃんが泣いてしまった、さあ大変! このとき普通の人ならばなんとか赤ちゃんを黙らす方法を考えてみんなが助かる方法を模索しますが、サイコパスなら躊躇なく赤ちゃんを殺します。

 サイコパスの脳に器質的な異常があるということは、けっして遺伝の影響も無視できません。
 だから将来的に遺伝情報で誰がサイコパスであるかわかるようになれば、とんでもない差別社会が生まれるでしょう。なんせ100人に1人の確率で存在するのですから。
 このことは言い換えれば、生物の進化学的にサイコパスという個体が排除されることなく残ってきたということです。
 つまり、人類の進化のうえでサイコパスは有用だったということですね。
 読んでて納得したけど同時にぞっとしたのは、人類の歴史は常に戦争がつきまとっていたということです。
 戦場において隣の味方が殺されても動じることなく、敵兵を殺戮できる殺人マシーン。
 サイコパスならば、時代によっては凡人の到達できぬ英雄であったはずなのです。
 しかし現代になって、大きな戦争はなくなりつつあり、中世と比べて人を殺す機会は格段に減っています。道徳のレベルが向上しているからです。
 このことは、サイコパスにとっては生き辛く、彼らが“異体”として浮かび上がってきた原因ではないかと思われるのですね。
 私も息をするように嘘をつく人間なのですが、嘘つきや人格破綻はともかく、フワフワ好きの私的には動物が虐待されても心の痛みを感じないというのが、震えるほど恐ろしいわ。絶対に隣にいたくない。

 と言いつつ私も実はサイコパスだったりしてと最終章の簡単なサイコパスチェックを試してみました。たとえ自分がサイコパスであっても効果的な治療方法は今のところ確立されておりませんので、あしからず。小説家などの職業が向いているようなので、そっちの方面でおとなしく頑張ってください。


 

 
 
 
 
 

「PC遠隔操作事件」神保哲生

 片山祐輔の名前はおぼろげでも、顔を見れば多くの方が思い出すことだと思います。
 2012年6月から約2ヶ月、片山は犯罪とは縁もゆかりもない4人の一般市民のパソコンを遠隔操作し、JALニューヨーク便の爆破予告を含む14件もの殺害・爆破予告をネットで発信しました。
 犯罪の土台となったパソコンの持ち主である4人の“被害者”は、警察によって誤認逮捕されました。
 4人のうち2人は取り調べのプレッシャーに絶えきれず、虚偽の自白をしました。
 やがて真犯人からの犯行声明のメールが届き、疑いは晴れたものの、彼らは一生消えることのない心の傷を負いました。被害者の中には未成年ですでに家裁の処分を受けた方もいたのです。
 真犯人である片山は、警察をあざ笑うかのように挑発的な挑戦メールを送り続け、証拠物件を見つけるために警察は冬の雲取山に登山したり、江ノ島で猫の大捕り物をさせられたりしました。
 このときくらいから、テレビなどメディアの煽りもあって、日本中が大騒ぎになります。
 結果、江ノ島に防犯カメラが存在するとは思っていなかった片山の抜け作のおかげで、彼のデブオタの容姿はバッチリ捉えられ、2013年2月10日に江東区の自宅マンションで逮捕されました。
 しかし、検察が時期尚早であると考えていたように、この逮捕はやや拙速でした。
 片山を有罪にする決定的な証拠がなかったのです。
 片山こそ遠隔操作の真の被害者ではないか――佐藤博司弁護士をはじめとする最強の弁護団に守られ、片山は容疑を全面否認します。裁判の行方は予断を許さず、検察と弁護双方の壮絶な舌戦の渦中、それは起こりました。
 保釈中、あろうことか片山は別の真犯人を装った偽装メールを発信し、これに使用したスマホを荒川の河川敷に埋めましたが、瞬時に警察に発見されてしまったのです。信じられない間抜けな墓穴でした。
 万事休す。偽装の動かぬ証拠を押さえられた片山は否認を一転、すべての犯行を認めたのです。
 2015年2月4日、片山祐輔には懲役8年の判決が下されました。
 これがだいたいの「PC遠隔操作事件」の概要なのですが、本書は知られざる事件の裏側が網羅されています。
 片山はなぜ一文にもならぬ事件を起こしたのか、その動機とは?
 誤認逮捕という大失態を犯した警察の捜査手法など日本の司法制度の問題から、俯瞰すればネットオタクによる悪質ないたずらにすぎない事件がこれほどまでに国内を騒がせることになった原因ともいえるマスコミの問題まで、事件の表層にとどまらず事件の外郭を取り巻くこの国の真の病巣にまで迫る、渾身のノンフィクション。

 著者は相当力あります。論理的だし読んでて見事だと思いました。
 ただ、長い。558ページもある。ジャーナリスト心理としてそれでもまだ言いたいことは足りないのでしょうが、あと100ページは削ることができたと思います。面白いけど小説ではないので、読んでいる方は非常に疲れる。
 まあでも、間違いなく事件ルポとしては秀逸な出来です。
 新聞やテレビでこの事件のことを見ていましたが、知らないことがたくさんありました。
 ツボは証拠品回収のために雲取山に登山させられた警察官たち。急に行けと言われて冬山登山の準備など知らなかったのでベンチコートとか間抜けなカッコで行って偶然現地で会った山岳救助隊に怒られたそうです。そりゃそうだよね、雲取山って東京最高峰で2千メートル超えてるんだってね。それでもあるはずのUSBはなぜだか見つからなかった。だから焦れた片山が江ノ島の猫を使うことになってそれが結果的に逮捕に繋がったのだから、何が幸いするやらわかりません。
 そして片山に前科があったことを知りませんでした。のまネコ事件で1年6ヶ月もの実刑判決を受けていたのですね。
 名字を変えて(両親がわざと離婚)、前科を隠していました。
 今回の事件は出所してから丸5年経っていなかったため、量刑には再犯のペナルティが課せられています。
 今回の8年と合わせて40歳までに10年近く刑務所に入るとは、ヤクザ顔負けの牢名主です。
 出てきても、また似たようなことをやる可能性は高いと思います。
 それでも、誤認逮捕された被害者のことを考えると腹が立ちますが、中学時代にイジメを受けた経験もあり、対人関係がうまくいかずネットの世界しか息を抜ける場所がなかったことを知ると、なんだか同情してしまいます。
 私は、社会に対し自らの存在を誇示せずにはいられない特異な自己顕示欲、自己承認欲求が片山にあったことは無論ですが、私は彼はネットの世界で少しずつリアルな人間としての常識をなくしていったのだと思うのですね。
 ネット世界は顔を出さなくてもいいというのが、リアル社会と大きく異なる点だと思いますが、この顔を出さなくていいということが片山にとっては逆に本当の社会になってしまい、コンピュータプログラマーの派遣社員としてのリアル生活のほうが裏になってしまったんじゃないかと思うのです。だからネット世界でこれだけ負の感情を爆発させたんじゃないですかね。発端はともかく、それは必ずしもストレスからの逃げでも反動とも次元が違う話だと思うんです。
 アル中やヤク中と同じように、ネット中毒というのは存在すると思います。


 
 
 
 
 

「月の満ち欠け」佐藤正午

 あたしは、月のように死んで、生まれ変わる
 月の満ち欠けのように、生と死を繰り返す


 第157回(平成29年度上半期)直木賞受賞作です。
 この手の話を直木賞で読んだのは初めてだし、この手の話は好きなので面白かったですね。
 ちょっと文体は重めで硬いけど、ファンタジック・ラブストーリーと云えますか。
 切なくはならないな。なんでだろう、そういう風に書いていないのかもしれないし、単に硬いからかもしれない。
 あるいは、瑠璃の気持ちが重すぎる、哲彦への思いが強すぎて理解しにくいということも考えられるでしょう。
 でも、謎が謎を呼ぶ展開にさくっと引き込まれました。純粋に楽しめる物語でした。
 読みながら、軽く日本酒を五合。日本盛の糖度ゼロのやつ。酒の肴としても最高の本だったということです。
 佐藤正午の小説は初めて読みましたが、ぜひ他のも読みたいと思いましたよ。
 直木賞の選評で北方謙三が「私と同じ年のデビューで・・・」と言っているのを目にしましたが、寡作なんですよね。
 そのぶん、ひとつひとつの作品が濃そうでいいじゃないですか。
 たぶん職業小説家ではないのでしょうね。

 あらすじそのものがネタバレなので、導入だけ。
 小山内堅・梢夫婦の一人娘である瑠璃が“変調”したのは、7歳のときだった。
 一週間続いた高熱のあと、急に平常に戻った瑠璃はお気に入りのクマのぬいぐるみに「アキラ」と名前を付けた。
 妻の梢がいくら本人に聞いても、「アキラ」の出処はわからない。
 やがて瑠璃は知っているはずのない古い歌謡曲を歌い、ノートには両親も知らない短歌を書き連ね、ひとりで高田馬場の廃ビルにいるところを補導された。何を探していたのだろう?
 娘は知るはずのない昔のことを知っており、それを隠そうとしている。
 しかし父親として堅ができたことは、瑠璃が補導されたときに、ひとりで遠くまでいくのは高校を卒業してからと約束することだけだった。しかし11年待って瑠璃は高校を卒業した後、妻の梢と共に交通事故に巻き込まれた。ふたりとも即死だった。
 それから15年後。堅は瑠璃の遺品の中に、一枚の油絵を見つけた。高校時代、彼女は美術部員だったのだ。
 包み紙をほどくと、そこに描かれていたのは、堅が知らない青年の顔だった。
 
 ちょっとややこしいのでね、整理すると、
 正木瑠璃(奈良岡瑠璃)がオリジナル、次に小山内瑠璃、小沼希美、今の緑坂るりの順番です。
 ちなみに三角哲彦の年齢をこれに当てはめると、それぞれに20、38,45,52になります。
 どうして幼いうちに亡くなりやすいのか、これは条理を壊して無理しているからでしょうね。
 まあ、条理も不条理もないわけだけど(笑)
 意外ですが巻末の参考文献にある通り「前世を記憶する子どもたち」という本は実在しますから、そこに何かヒントが書かれているかもしれませんね。あんまり読む気はしませんが。
 気になるところもありました。
 「生まれ変わりはあたしだけとはかぎらないよ」と緑坂るりが言ったとき、思わず背筋がぞっとしたのは、荒谷母娘のことではなく、正木竜之介のことが頭にあったからです。
 これはどうだろう。物語を覆すのに十分な伏線でしたが、作者はたぶんあえて放置したと思う。
 ラブストーリーがホラーに変わるほどの破壊力を正木竜之介というキャラクターは持っていたように思います。
 もっとも、もしもそうしていれば本作が直木賞を受賞するような本にはなっていなかったかな・・・
 正木が拘置所で残した短い遺言とは、「ちょっと死んでみる」に違いないと思うんですよ。
 5,6年前に死んだということなので、彼がまだ「生き返ってない」とは言えないでしょう? 
 緑坂ゆいが長電話していたマネージャーが「真崎」という名前だったことは偶然ではないと思います。
 緑坂るりちゃんは今後無事でしょうかね、心配だねえ。
 弟ができたなら、それはきっと「正木」ですよ。


 

 
 
 

「飛鳳 海軍中攻隊奮戦記」福田清治

 元中攻パイロットの著者が、経営する出版社で自前で刊行した非売品の戦記。1973年発行。
 巻頭の序文はあの淵田美津雄ですよ。海兵52期、真珠湾攻撃の現地指揮官ですね。
 戦後はアメリカやヨーロッパでキリスト教の伝道師をしていたという伝説の飛行隊長です。
 敗戦への転機となったミッドウェーのときは虫垂炎のために、現場指揮官ができませんでした。もしも淵田美津雄がミッドウェー島攻撃の指揮官だったならば、あんな惨敗はしていないと思いますね。
 敵機動部隊を発見することを考えて「島に二次攻撃の必要アリと認む」なんて司令部に打電していないでしょうから。
 そんな大人物に著者がなぜ序文を頼めたかというと、著者が大阪水交会の会員で淵田美津雄が会長であったためです。
 ざっくばらんながら格調高く深い漢文への教養を感じさせる序文でした。
 淵田美津雄が序文を寄せた本を他に私は知りません。

 で、本書の内容なのですが、ちょっとわかりにくいところがあるというか、古書ならではの雑な部分があります。
 まず、著者である福田清治さんの海軍時代の階級や出自がはっきりしていないこと。
 読む限りでは、第1航空隊(752空)の中攻操縦員で小隊長ということしかわかりません。
 写真を見る限りでは下士官ではないかと思うのですが、支那事変での爆撃の経験もあるようで古参だと思われるし、終戦間際のところで予備士官が敬語で喋っているので、飛曹長以上の特務士官の可能性もあります。予科練の何期出身とかいつどこの生まれであるとも書いていませんのでね。ちょっと不思議ですよね。
 それに、どうやら福田さんではないと思われる方の体験談も混じっているようです。
 途中で昭和19年2月17日のトラック大空襲で迎撃に上がった零式観測機の記事がありました。
 中攻のパイロットがまさか零観に乗るはずはないと思うのでね。
 この零観は結局撃墜されるのですが操縦員は生き残ったようで、大変貴重な記事だと思うのですが、誰が書いたのかわからないのは本当に残念だと思います。大阪水交会の誰かでしょうか。
 書いた方の名前が入っている記事も寄稿みたいな感じで少しありましたが、こちらも甲種予科練1期生(野口克己さん)であったり、4回も墜落した経験のある艦爆のパイロット(大西貞明さん)であったり、生半可ではありません。
 願わくば、非売品なので仕方ないのかもしれませんが、将来読まれるということにもっと考えを向けて、編集、構成をしっかりしてほしかったと思います。
 ただ写真類は不鮮明でありながらも、今まで見たこと無いのがありました。敵空母直上で撃墜される銀河などですね。

 結局、著者の実体験が書かれているのは、海戦劈頭のシンガポール爆撃、レパルス雷撃、マーシャル群島タロア基地での経験、そして戦争末期の台湾での体験かと思われます。
 中攻での雷撃は、いつ読んでもすさまじいですね。
 高角砲、機関砲の弾幕の真只中を、針路を変えることなく直進しなければならない雷撃のおきて。
 いかに操縦が上手でも弾はよけてくれません。被弾しないのが不思議なくらいだそうです。
 一式ライターと呼ばれるくらい脆弱な機体。著者ははっきりと欠陥機であったと書いています。
 昭和20年6月に台湾の新竹飛行場にいた著者は、螺旋爆弾による爆撃で多くの部下や同僚を失いました。
 螺旋爆弾とは、周囲に切型の入った小指関節程の鉄片が螺旋状に巻いている触発式の爆弾で、人馬殺傷弾と言われる新型爆弾でした。触発式なので下には入らないため土が一尺盛った防空壕であれば絶対大丈夫ですが、1キロの軽量で大量にばらまかれ、不発弾がなかったそうです。

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