「女ともだち」真梨幸子

 少しあらすじから。
 埼玉県と東京都の境にある人口十万の市(三ツ原市)にある、築七年の二十階建て分譲マンションで、二人の女性が殺害された。どちらの遺体も血まみれで、ひとつの遺体からは性器がくりぬかれ、子宮が抜き取られていた。
 いけにえとなったのは、吉崎満紀子(41)と田宮瑤子(38)、どちらも独身のキャリアウーマンだった。
 警察は、満紀子と肉体関係にあった配送ドライバー山口啓太郎を緊急逮捕する。
 山口は2階に住む満紀子を殺害してマンションから逃げたが、ふと振り返って見上げた先の20階の人影を認めて引き返し、20階の住んでいる瑤子をも殺害したという。
 事件は、発生から1年後、被告人の山口が独居房で自殺したことにより公訴は取り下げられ、法的には終結した。
 しかし、事件の真相は何一つ明らかにされていない。
 山口は勾留直後からずっと罪状を否認し続けていた。
 こんな状態で事件が封印されていいものだろうか?
 満紀子の子宮は依然として見つかっていないというのに・・・
 発生直後からずっとこの猟奇的事件を追い続けてきたフリーのルポライターである楢本野江は、事件の真相を追う。
 この事件は未解決だ。子宮を「持っている」者こそが、この事件の真実を知っている・・・

 はい。
 相変わらず女性の絡むドロドロミステリーを書かせたら右に出るものはいない真梨幸子さん。
 この小説は、2006年のもの。殺人鬼フジコなどと合わせてドロドロ三部作とも言われているそうですが・・・
 まず、殺害された吉崎満紀子がドロドロ。
 司法試験に合格した才媛でありながら、社会不適合者とでも言うんですかね、出会い系サイトで売春を繰り返し、下着はオークションに出品し、複数回妊娠しては謎の経口中絶薬で強引に自己堕胎し、妊娠をネタに売春相手から金を脅し取っては、お気に入りの劇団役者のタニマチとして大金を貢いでいたという・・・
 この事件を独自で追うライターの楢本野江は、満紀子の売春相手だった山口は無実であるけれども、事件の核心は満紀子の周囲にあるに違いないと見て、推理を進めるのですが、事件の真相は思わぬところにあります。
 最後まで真相はわかりません。
 この小説が面白いのかどうかは別にして、ラストまで引っ張る力があることだけは間違いありませんね。
 まあ、ミステリーとしてのオチは卑怯ですけども、雰囲気で読ませるとでもいいますか。
 
 結局この小説のテーマは、タイトルが意味深ですが、友人関係の形だと思います。
 リアルな友達だけではなく、今ではネットの繋がりですね、ネット友達というのがあり得ます。
 刊行から10年近く経っているので、今から見ると陳腐ですが、当時ではまだまだ斬新でしょう。
 リアル友達には打ち明けられない話でも、顔の知らない相手だと打ち明けられてしまうというマジックが存在します。
 じゃあ一体、友達ってなんだよという話です。
 リアル友達は一緒にいても体臭が臭ったり屁を放ったり長時間いるとストレスを感じますが、ネット友達はある意味無臭です。自分のことを本当は知らないという、逆の安心感もありますし、相手を知りたいという好奇心も刺激されるわけです。
 もちろん、昔だって文通相手という正体不明のつきあい方はありました。
 しかし、1対1の関係がアナログ的に阻害されにくい文通とは違って、インターネットの世界であると様々な方向に飛び火し、リンクしていく可能性があります。
 ネットは距離が測れないんですね。
 ですから、たまたまネットで知り合った人間が同じマンションに住んでいる人間であるという可能性もゼロではなく、もしもそうなってお互いの正体がバレたときにどうなるかということです。
 事情が事情ならば、気色悪くはあるでしょう。
 犯罪が起きるとその周辺のリアル人間関係は洗われますが、今はもう、それだけでは足りないかもですね。
 顔も知らない相手と濃密な人間関係を築いている可能性が存在しうるわけです。
 そういう時代ですな。


 
 
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「それを愛とは呼ばず」桜木紫乃

 意外なラスト。
 思わず、目が点になりました(*_*)
 これまでの作品を読んできた桜木紫乃ファンから見ると、どうかなあ、これは。
 私は別にそれほどのファンではありませんけどね。
 今、一本筋の通ったヒューマンドラマをじっくり読もうと思えば、この方が一番だとは思っています。
 宮本輝の路線を継承するとでもいましょうかね。
 そして、読み始めると舞台が新潟だったので、桜木紫乃もついに北海道から飛び出したかとは思いました。
 ついに北海道の宮本輝が、北の大地から飛躍したのだと。
 それがなんと、読み終えてみて、飛躍しすぎたことに気づいたわけですが(苦笑)
 プロットは申し分ないとは思いますが、作り込みに失敗したのと、方向性に少し筆の迷いがあったように思います。

 それではタイトルの「それ」の意味の考察も含めて、物語を少し追っていきましょう。
 主人公は、白川紗希です。伊澤亮介ではありません。
 美少女コンテストに準優勝した紗希が、釧路から東京に出てきて10年。29歳になりました。
 生活を節制し、外見の維持に涙ぐましい努力を重ねながらも、次第に仕事も減り、ついに所属事務所をクビになってしまいます。いまさら、北海道の実家に帰るわけにもいきません。
 明日からどう生きていくかの算段もつかぬまま、バイトをしている銀座の老舗キャバレーで仕事についた紗希は、そこで一人の中年の紳士に出会います。
 キャバレー支配人の知人という触れ込みできた男の名は、伊澤亮介。54歳。
 伊澤は東京でずっとホテルマンとして活躍しながら火災事故によって失職、新潟の女傑と云われた女性経営者に見初められ、郷里の新潟でホストクラブなど飲食業からブティックまで経営する地元型複合企業の副社長をしていました。
 しかし妻であり社長である伊澤章子が交通事故に遭って意識不明の状態が続き、ずっと亮介に反感を持っていた義理の息子の専務が、独断で彼を会社から追い出してしまったのです。
 新潟では働きづらい亮介が東京で得た仕事は、不動産会社の営業職でした。
 しかも、入社してすぐに北海道の千歳の南側にある南神居町でのマリゾートンション販売を命じられました。
 実家が北海道にある紗希は、好色そうな雰囲気が微塵もない亮介のそばで自分の気持ちが落ち着くのを感じます。
 意識が戻らない妻を新潟に置いて、東京で職を見つけたはいいが、北海道でマンションを売る羽目になった男。
 事務所から戦力外通告を受け、夢に取り残された明日から生きるすべが見つからない女。
 追い詰められたふたりが出会ったことから、思いもかけない物語が紡がれていくのですが・・・

 はい。
 まず紗希はいったいどこから狂っていたかということなんですが、事務所をクビになったことを発端として、吉田プロの自殺でそれが決定的になったと思われます。よく読み返してみると、北海道に行ってから紗希のおかしいところは多々目につきますね。
 吉田プロの死因については、無理心中であり母の首を絞めたとは書かれていますが、吉田プロ自身がどう死んだかについては書かれていません。おそらく先にそうしたのであれば、練炭自殺ではなかったのではないでしょうか。
 すると、カムイヒルズの小木田は紗希が殺したのではなく、純粋に小木田と春奈(う~ん)の一酸化炭素中毒自殺であったと思われます。 一酸化炭素を使った小木田の自殺が、後に紗希がする行為の直接のヒントになったということです。
 だいたい、紗希は執拗に小木田にこだわっていましたよね。普通の人間ならば、小木田は気色悪いはずです。
 それはおそらく春奈というダッチワイフがこの物語の間接的な暗喩になっているからだと思われます。
 という話はすべて「それを愛とは呼ばず」の「それ」に繋がっていく話です。
 紗希が亮介を殺したのは、幸福を閉じ込めて永遠にするためです、彼の時間を幸福なときのまま止めるためです。
 それが吉田プロを失い小木田によって確立された紗希にとっての“愛”の形だったわけですね。
 その行為に対して検事らは、「私ら法律家はそれを愛とは呼ばないのです」と言ったと思われます。殺人ですから。
 裏付けは、カムイヒルズでの紗希と小木田の会話にあります。
 「小木田さん、さびしいときに会いたいと思うのは、好きということでしょうか」
 「そういう側面もあると思います」
 「そのひとが幸せなままでいてほしいと思うのも、好きということですか」
 「つまりそれが、好きってことですよ」

 幸せなまま死ねば、それが永遠になるということ。
 現実というアイデンティティを失った彼女の行き着いた先は、生きている世界の向こう側だったのです。

 ラストの章があまりにも唐突だったのも読後感の悪さに影響していますが、ちゃんと作り込まれてうんと練れていれば、この話は素晴らしい領域にまで昇華できたと思います。もったいない。


 

 
 
 

「CUT」菅原和也

 2012年度横溝正史ミステリ大賞を受賞したデビュー作「さあ、地獄へ堕ちよう」の次に出された作品。
 2013年8月の刊行です。
 すっかり存在を忘れかけていましたが、読んでみました。
 まあ、そんな悪くなかったと思います。面白くてたまらん、ということはないですけどね。
 意外に筆力があるんですよね、この方。
 高校を中退して上京、バーやキャバクラなど水商売に身をおいていた異色の経歴の持ち主です。
 前作のアンダーグラウンド感はハンパなかったなあ。
 お水の業界って、中にいる人しかわからない独特のものがありますからね。
 それがこの方の武器であると思いますし、正直、本作も主人公を取り巻く水商売の世界が描かれているところが、本筋のミステリーより面白く読めました。
 嫌味だけれども、本当にそうなんだから仕方ない。
 いっそミステリーに染めるのではなくて、本作はお水の世界をバックグラウンドにエコ(廃園絵子)の生き様を追った青春恋愛小説にすればよかったんじゃないでしょうか。透はボケ役でいいでしょ。
 そうすれば、白河三兎の「私を知らないで」みたいな感じでブレイクする可能性もあったのでは。
 名前忘れましたが、あの小説のヒロインとここのエコって雰囲気が似ているように思います。

 では簡単にあらすじと説明。
 キャバクラの客引きをしている安永透(24歳)は、派遣のキャスト(ヘルプの女の子みたいなもの)を深夜送り届けている途中、首のない死体を発見するのです。
 状態を確認した透は嘔吐寸前になりますが、そこに派遣キャストのひとり、エコという女の子がやって来て、死体を冷静に検分するのです。被害者は少女でしたが、暴行されていないのを確かめたり、首がない理由を考えたり。
 実際は、すぐそこに切り離された首が置かれていたわけですけどね。
 俗に犯人が遺体を損壊する理由は、運びやすいようにするための「運搬」、遺体の身元をわからなくするための「隠蔽」、そして感情が狂気にまで昇華した「憎悪」が考えられるそうです。エコによれば。
 しかし、切り離された首が近くに置かれているこの事件はどれにも当てはまりそうにない。
 さらに、警察による検死の結果、頭を殴られたうえに、首を絞められ、さらには首を切り離されていたことがわかりました。
 被害者は、近所の16歳の女子高生でした。
 実はこの手口、半年前に小学3年生の女の子が殺されたやり口と同じでした。同一犯による連続殺人です。
 勤めているキャバクラの店長から、エコを正規のキャストにスカウトしろと命令された透。
 しかしそれどころか、探偵事務所のアルバイトまでしているエコに強引にコンビを組まされ、猟奇殺人事件の真相を追うことになるのですが・・・

 途中、真犯人がこのままで終わるのかと思ってある意味ぞっとしました(笑)
 あーくんがなんであーくんなのかも、けっこういいセンスだったかなと。
 首が切り離される理由を最後まで引っ張ったのも、いいリードだったし。
 惜しいのは、いいキャラクターだったエコの化けの皮がはがれたこと。
 これ続編は無理なんでしょうが、彩人のその後があれば本作も意味のあるものになったかもねえ。
 もしかして、作者はそのつもりだったのかしれませんね。
 エコはともかく、これ一作だけではあまり価値はないと思うなあ。
 惜しいなあ、菅原和也。近年の新人作家には見られないもの持っていると思いますが・・・


 
 

「酷 ハーシュ」前川裕

 離人症になると、自分の行動を客観的に見てしまい、現実感が持てなくなるそうです。
 病名でいうと、解離性障害や、もっとも重い解離性同一性障害(多重人格障害)は、これに当たります。
 同じ人間に色々な人格が現れる、あるいは現れていると自分では感じているのがこの病気の特徴です。
 感情や記憶の解離は、人間の発達過程における経験(虐待など)によって引き起こされるそうです。
 あまりにも辛い出来事から、ふっと魂が逃げてしまう、ようなことがきっかけということなのでしょう。
 患者に対して周囲の人間が優しく見守ることが大切ですが、この病気は自殺や殺人に繋がる可能性もあるそうです。
 まあ、サイコな映画やら小説やらで多重人格を扱ったものは多いですわな。
 こういうと差別的で失礼に当たるわけですが、あくまでも映画や小説のネタで使われていることだけに限ったことでいえば、平凡な日常生活とはかけ離れたアンダーグラウンドなネタになりますし、だいいち気色悪いですし、ミステリーでいえばラストでドンデン返しがサクッと決まりやすくなるようなファクターですよね。実は、同じ人間の中に探偵と真犯人がふたりいた、みたいな。
 実際は「ジキル博士とハイド氏」みたいな、グロテスクな病気ではないと思うんですけどねえ。
 専門的なことでいえば、ひとりの人間に複数の人格が現れるというよりは、ひとりの人間がひとつの明確な人格を持ち得ないことが問題だそうです。なるほど、意味深というか、なんとも言い様がないですね。
 ただ私が思うのは、精神的に正常だと云われるような人間のなかで、ほんとうに正常なのはわずかしかいないんじゃないでしょうか。誰しもが、おかしいと云われるところを持っているものだと思います。変態性欲とか特にそうでしょ。
 私だってあなただって、「正常」と「おかしい」の紙一重のところに存在しているもんだと思いますよ。
 この作品は、作為的ですけど、その境界のボカし方がちょっと怖かったですけどね。

 少しあらすじをいきましょう。
 1993年6月20日深夜。台風による暴風雨に見舞われた東京で、凄惨な事件が起きた。
 吉祥時のマンションで、入居3ヶ月の新婚夫婦が性行為の最中、何者かに斧のような鈍器で残酷に撲殺されたのだ。
 隣人の通報で警官が駆けつけたとき、犯人の姿はなく、物色された部屋の中は血まみれだった。
 残忍な殺害方法から怨恨説が根強く云われたが、夫婦に犯行に繋がるような人間関係はなく、捜査は難航する。
 迷宮入りかと危惧されたとき、事件の真相はあっけなくあらわになった。
 このマンションの所有者が、事件の前に部屋のカギと免許証の入った定期入れを紛失していたのである。
 35歳のトラック運転手である坂田修司は、拾った免許でサラ金から金を借りようとしていたところを通報された。
 坂田は、免許に書かれていた住所であるマンションの部屋にカギを使って押し入り、夫婦を斧で撲殺したと自供した。
 ――それから約20年。
 警視庁捜査一課の刑事、手塚京介(32)は2011年7月29日に発生し、2年の間捜査が進展していない杉並区荻窪の新婚夫婦殺害事件特別捜査本部に補充された。刑事のひとりが入院したのである。
 荻窪の事件は、マンションの1室で新婚夫婦が何者かに手斧で撲殺され、現金2万円が奪われた事件である。
 事件の慰留証拠品は、新婦の口に押し込まれていたブライダルサロンのパンフレット(夫婦はそのサロンを使用した)、犯人のものとも元から部屋にあったものともわからない手作りのアイピロー(目の上にのせる小型枕)、そして血だまりを踏んだためにクッキリと跡の残った27センチの靴跡(これから推測されるのは175センチ以上の男性)。
 捜査陣は強殺か怨恨殺かでいまだに揉めている。
 一課付きのキャリアで捜査責任者の山上達彦管理官などは、サイコキラーによる猟奇殺人を主張していた。
 28歳と若いが階級とプライドだけは高い山上は、捜査本部のすべての刑事から嫌われていた。
 そして遊軍として捜査陣に加わった手塚は、ある情報筋から山上が被害者である新婦といとこ同士だったことを知る。
 しかも、山上はいとこでありながら、その新婦に惚れ込んでいたというのである。
 すべてを隠していた山上をサシで手塚が追求すると、さして山上は動揺しなかったが、ほどなく失踪した。
 そして手塚は、20年前の手斧殺人事件の犯人で無期懲役囚の坂田修司が、刑務所を仮釈放になって保護司のもとから行方をくらましていることを知る。

 赤い百日紅の花、あれはいったいなんの伏線だったのでしょうか。
 いや、なんの伏線でもなかったのです。
 この一連の事件の犯人には、伏線など要らなかったのですね。
 だから怖いんです。
 先に書いた境界のボカし方とはそういうことで、涼という人間がいったい何を目論んでいたのか、どこがどういうふうにおかしかったのか、実際のところはハッキリしていません。
 だから怖かったのです。たいていの方は、きっと途中で真犯人の行方に気付いておられたことでしょう。
 でも何か釈然としないものが残るでしょ。
 ラストでもう1回ひっくり返るかと思って、ドキドキしましたけどね。え、坂田は冤罪だったのかと。
 別に・・・何もなかったようです。
 靴にアイピローを仕込むのは、今までありそうでなかったね、なるほどと思いました。


 
 
 

「襲名犯」竹吉優輔

 第59回(2013年度)江戸川乱歩賞受賞作です。
 80ページまでは面白かった(・∀・)♪
 今更遅れて読んだくせに、偉そうなことは云えないんですけどね。
 雰囲気はあったと思います。キャラクターも良かったし、会話も普通でした。
 でも、どこかがおかしい。読みづらい、というか。結局、全体的な説得力に欠けるというか。
 プロとアマチュアの違いというのは、言葉で言い表せないような小さな部分に出てくるんだと思います。
 ま、それは後述するとしてとりあえず、あらすじを。

 1999年、茨城県栄馬市及び県境を挟んだ千葉県吾妻市において市民を恐怖のどん底に追い込んだ凄惨な事件、児童を含む7人の殺害及び遺体損壊の罪で極刑が確定していた死刑囚に、刑が執行された。
 最終判決が出てから7年、逮捕されてから14年が経っていた。
 死刑囚の名は新田秀哉、38歳。またの名を、ルイス・キャロルの小説に出てくる怪物にちなんで“ブージャム”と呼ばれた。
 快楽猟奇殺人者、サイコパス、加虐性が高じて7人もの命を奪った鬼畜と蔑まれながら、ミケランジェロのダビデ像のような美形の青年だったブージャムこと新田秀哉は、熱烈に彼を支持する女性と獄中で3度の結婚もし、アンダーグラウンドでは人殺しという垣根を越えたカリスマとして畏敬の念を集め、多くの人々から恐怖だけでなく興味を寄せられていた。
 それは「ブージャミング」と呼ばれる社会現象にもなったのである。
 そして――死刑執行から約ひと月が経ったころ。
 栄馬の悪夢再び・・・市内で女性の惨殺死体が発見された。遺体は鼻だけを鈍器のようなもので潰されており、現場には被害者の血液で描いたとおもわれる落書きが残されていた。
 Im BOOOOOOOJUM!!
 それは新田秀哉の熱烈な信奉者による犯行と思われた。
  恐るべき殺人鬼ブージャムの再来なのである。ブージャムの名を“襲名”した犯人はかつての師匠のように、栄馬市で脈絡もなく殺人を重ねながら遺体を損壊していく。
 一方、栄馬市立図書館で嘱託司書をしている南條仁は悪夢に見舞われた。
 彼と双子の兄だった南條信は、ブージャム事件の7人目、つまり最後の被害者であり、その件が新田秀哉の逮捕に繋がったのだが、それゆえ第2のブージャムは仁の兄を憎み、その代わりに仁を標的にしたのである。
 やがて、栄馬市立図書館の返却用ポストに人間の血液と切り取られた小指が届けられる・・・

 乱歩賞作品読んで面白いのは、巻末に審査委員の選評が載せられていること。
 今は確かね・・・東野圭吾、桐野夏生、京極夏彦、今野敏、石田衣良の5人。そうそうたるメンバーですね。
 だいたい、東野圭吾が一番辛口で、桐野夏生が一番優しい。
 最終選考作品は5作あって、当然ながら委員の好みで採点は分かれる部分があります。
 これはいつものことなんですが、今回は本作を強烈に押す人はいなかったそうです。
 つまり、消極的理由から選ばれたような感じですね。可もなく不可もなくで最後に残っちゃったという。
 なるほど本作には大きな欠点はありません。
 何人かの委員が指摘しているように、警察組織の理解が足りない部分はすぐ目につきますがね。
 地方警察の捜査課の刑事にキャリアはいません。新宿鮫じゃないんだから(笑)
 それに、所轄署に交通機動隊はいません。彼らの本部は別個にありますね。
 それ以外では、東野圭吾がいくら美形の殺人鬼でも人気を集めすぎ、それにブージャムという呼び名の意味もわからん、と書いているのが目につきましたが、確かにそのとおりで、なんかこう、常識とそぐわないところがありますね。
 しかし、惜しいというか、雰囲気はあります。
 出来上がった蕎麦は普通の味だったが、実は最高級のそば粉を使っていたと思われるフシがある、みたいな。
 
 もう一作、読んでみてかな。この作者の評価は。
 60%くらいの確率で、コンスタントに作品を出すプロになれる能力があると見ていますが、どうでしょうかね。
 警察に関する書き方は幼稚でしたが、図書館に関する情報はびっくりするくらい精緻でした。
 図書館はレファレンス(調べ物の手伝い)なんてしてんだ。へぇ・・・


 
 
 
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