SSL化

 いつもご覧いただき、ありがとうございます。
 この度FC2ブログもセキュリティ向上のためにSSL化が導入され
 弊ブログも速やかな移行を目指して目下取り組んでおりますが
 いかんせん1300に近い記事の見直しをしなければならず大苦戦しております。
 また私はネアンデルタール人なみの演算能力しかないため
 HTMLはただひたすら暗号でありURLの正規化のためには
 長年慣れ親しんだテンプレートの変更も視野に入れなければなりません。
 正直いえばGoogleには怨嗟の感情すら巻き起こっている状態で、
 やる気をまったくなくしております。
 自慢になりますが仕事は日経平均を逆行する暇さ加減を誇っているので、
 本を読む時間は腐るほどあるのですが
 ここしばらくはSSL化への移行に目処が立つまで、
 まあ、書評は1週間に1冊程度で細々とひっそりと
 ぼんやりと酒を飲みながら猫を愛でつつ続けていこうかと思っておりますので
 変わらぬご愛顧をどうぞよろしくお願いいたします。


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「自殺予定日」秋吉理香子

 今日から一週間。それが私の“自殺予定日”

 昔友達が死にそうになって「あと一日がんばろう」「もう一日辛抱しよう」と言っているうちに、今ではそいつ私の年収の50倍くらい稼いでいるんですよ。もう会うたびに「はよ死ね!」と言ってますけどね(笑)
 先を見すぎて悲観するのは馬鹿な話であって、人の一生なんて一日一日の繰り返しの蓄積だけなんですから、うんこが堆積していくのと同じでね、まったくたいした意味はありませんから、辛くても一日区切りで頑張って生きていくことです。
 頑張れって言われることこそ辛いと聞きますけども、それは頑張りの意味をはき違えているからであって、なにも受験や仕事を頑張れと言っているのではなく、一日過ぎればよく頑張って生きたということになると思うんですよ。遠い先の目標ではありません、とりあえず今日の日が暮れるまで頑張って生きてみようと言ってるんです。それくらいならなんとか頑張れるでしょ? 人間はいつ死ぬのかわからないのですからね。坂本龍馬の手紙じゃないですが、風呂桶にキ☆タマをぶつけて急に死んだ人もおられるのですからね。
 本作にも書かれていましたが、鬱もひどくなると死ぬことさえできないそうですが、ならば逆に自殺される方はパワーがあるのではないでしょうか。そのパワーの切れ端でも使えば一日一日を耐えていくことも不可能じゃないと思うんですよ。

 あらすじ。
 16歳の渡辺瑠璃は、群馬県の山奥にある旅館をひとりで訪れた。
 自殺の名所とされる森で、首を吊って自殺するためである。
 瑠璃が12歳のときに母が急死し、半年前父も亡くなった。瑠璃は天涯孤独だ。友達もボーイフレンドもいない。
 父はレストランを経営するかたわらメディアにも数多く出演するフードプロデューサーで、母は結婚する前はパティシエだった。そんな環境で一人娘として育った瑠璃は、自然と料理に興味を覚えるようになり、独特の才能を育まれてきた。
 母の夢は、オーベルジュ(宿泊施設つきのレストラン)を家族で経営することだった。
 しかし、そんな夢もはかなく散ってしまった。
 血の繋がらない義理の母との、気が詰まる生活。
 母が亡くなって2年後、父は秘書だったれい子さんと結婚した。
 れい子と瑠璃は母娘になれないままに、父が死んでしまった。
 瑠璃は確信している。父はれい子に殺されたのだと――3億円の生命保険のために・・・
 警察に行っても、父のかかりつけの病院に行っても相手にされなかった。
 ならば遺書を残して、抗議の自死を決行するだけだ。天国で母と父の3人で昔のように楽しく過ごしたい。
 そして瑠璃は森の木に縄をかけて首を吊った。そのとき・・・
 ひとりの少年に邪魔をされた。彼の名は椎名裕章。
 一緒に旅館に行ってびっくりしたことに、瑠璃以外の人間には、彼の姿は見えなかった。
 そう、裕章は幽霊だった。2年前の今日、瑠璃も死のうとした森で首を吊って本当に死んだのだという。
 地縛霊となって不自由を強いられている彼は、ひとまず瑠璃に自殺を思いとどまらせ、父の死の謎を解決する手助けをしてくれるという。悩んだ末、瑠璃は1週間という期限を切り、裕章の手助けのもとに継母が父を殺した動かぬ証拠を発見しようとするのだが・・・

 うーん、ラノベみたい。軽すぎる。フワフワ。
 前はもっといい意味で腹が黒いといいますか気色悪い小説を書いていたように思うんですがねえ、秋吉理香子。
 もう冒頭で結果がわかってしまっていましたからね。
 これで書き下ろしというのだから。私はまたマーガレットか花とゆめにでも連載してたのかと思いましたよ。
 裕章の件は確かに想像できませんでしたが、真相を知ってもかなり無理があると思う。
 人間に間違えるからこそ幽霊なのです。人間を幽霊に間違えることができますかね? あれだけ一緒にいて。
 あと2,3冊かな、それがこの作家の見限り予定日だね。


 
 
 
 
 

「イノセント・デイズ」早見和真

 あらすじ。といいますか物語の題材となる事件の概要。
 桜のつぼみがほころび始めた3月30日の午前1時、横浜にある木造アパートで火の手が上がった。
 消防隊の懸命の消火活動の甲斐なく、三体の焼死体が搬出された。
 遺体の身元は、井上美香さん(26)と1歳になる双子の姉妹。
 一家の主・敬介さん(27)は、勤め先の介護老人ホームの夜勤に出ていて無事だった。
 井上宅のドア前に灯油が撒かれていたことなどから、警察はすぐに放火の線で捜査を開始。
 まもなく、敬介さんの元恋人だった田中幸乃(24)に任意同行を求めた。
 幸乃は大量の睡眠剤を服用し、自殺で自殺を図ろうとしていた。
 踏み込んだ警察によって一命を取り留めた幸乃は、一家に対する殺意を認めて逮捕された。
 幸乃は敬介さんと1年半ほど交際したのち、事件の2年前に別れていたが、それ以来ずっとストーカー行為をしていた。
 幸乃は事件の3週間前に大がかりな整形手術を行っていた。
 週刊誌を中心とするメディアは、幸乃の私生児として出生した過去や、その母が17歳のホステスであったこと、養父から受けていた虐待、中学時代に強盗致傷事件を起こして児童自立支援施設に入所していたという事実、出所後に真っ当な道を歩み始めたかに見えたものの、最愛の人との別れを機に再びモンスターと化していった経緯を暴き立てた。
 逮捕から半年後、横浜地裁は公判で田中幸乃に検察の求刑通り死刑を宣告した。

 で、物語は田中幸乃自身はもとより、彼女を取り上げた産科医や、不幸な幸乃が束の間の幸せを謳歌していた小学校時代の仲間、転落する転機となった中学時代の友人などを章ごとに語り手として構成され、彼女の人生を振り返りながら、着々と死刑執行のその時まで進行していきます。
 要は、いわゆる新聞発表などの彼女の経歴の裏には何があったのかということを掘り出して、紙面を読むだけでは冷酷無比な殺人鬼としか思えない田中幸乃が、実はとても殺人など犯せない人間だったということを明らかにしていくわけです。
 小説としてはミステリー・・・といいますか、まあミステリーなんでしょうけど、いきなり道路の真ん中に目につくように置かれているような誰でも気付く伏線といい、ラストでどんでん返しみたいな推理小説というのとは違います。
 読む人はだいたいの真相を早い段階で見抜けるでしょうからね。法廷の金髪の。
 でも、まったくもってこの物語がどこに向かうのかは最後の1ページまでわからなかったんじゃないでしょうか。
 私も、このラストはまったく想像できませんでした。
 そういうところが、この本が刊行3年を経てなお、じわじわ売れているという所以なのでしょうね。
 あくまでも作者の主眼は、よく目にする事件記事は表面上のものだけであって、本当のところは誰にもわからないんだよ、本当の背景は警察の捜査や法廷ですら明らかにできないものなんだよ、ということを訴えたかったと思うんですよ、私は。
 これは、ほんと同感ですね。
 ニュースで犯人の顔写真とか見ながら「悪いやっちゃなあ」とか勝手に思っていますが、「冤罪かもなあ」とは普通思いませんし、別に報道を疑いながら見ませんもんね。ある意味、仕方ないけど無責任だわ。
 もちろん、大多数が報道通りの悪人なんですが、それが99%間違いないだけに、1%の真実を見逃すんですな。
 これが、犯人の過去の人間らしい部分を知っている人間だと「おかしい」と感じるかもしれません。
 冤罪なんじゃかいかとか誰かに唆されたんじゃないかとか、被害者にも落ち度があったんじゃないかとかね。
 特に今だと誰でもネットで情報が発信できますから、真相に繋がりやすいということもあるでしょう。
 本作だってよく読んでみれば八田がブログで情報を出したし、丹下翔はインドのネットで情報に接することができたし、佐々木慎一はネットの質問サイトが行動の突破口になったのです。
 一昔前だったら、きっと知らないままだよ。
 それを思うと、知ることは必ずしも幸せには直結しないなと思いますね。

 細かいところはどうでしょうか。
 ひとつ腑に落ちないところがあって、どうして幸乃は放火に使われた灯油の行方を知っていたのかという。
 私が読んだのは単行本なのですが、文庫本はそのあたり修正されてたりするんですかね。
 まあ、私が肝心なところを読み落としている可能性もあるけど。
 あとは、なぜ幸乃が敬介のようなのを好きになったのかという点も、八田の自殺願望を見抜いたように、敬介には一種独特の魅力があったということで説明されていると思いますし、そうおかしいところはありませんね。
 これが読んだ通りのバッドエンドなのか、それとも実はこれこそがハッピーエンドだったのかという解釈については、読んだ人それぞれかと思います。
 一番かわいそうなのは佐々木慎一でしょうが、彼は幸乃の祖母にたくさんの告げ口をしましたし、中学生のときには幸乃の冤罪を見逃しています。敬介と出会う前に、彼が幸乃の前に出ていればふたりは幸せになったかもしれません。
 何事にも、時既に遅しという場合はあります。すべてタイミングですね。幸乃の人生が好転するきっかけはいくらでもありましたが、そうはならなかった。結局、それは幸乃の責任でもあるのでしょうし、彼女を取り巻いたすべての人間の責任でもあったと思います。それが社会ということでしょ。死刑は廃止するべきかもしれませんね。


 

 

「透明カメレオン」道尾秀介

 数年ぶりっすかね、道尾秀介の本。
 あれなんだっけ虫のオチのやつ、向日葵がなんたらかんたら?以来ずっと読んでたんですが、この方だんだん売れるにしがってぬるくなってきたでしょう、月9の原作やった頃からくらいでしたか。
 面白くなくなったといいますか、合わなくなってきたので読むの止めてました。
 全盛期は、ほんと貧乏な女の子書くのが上手くてね、リボンが買えないからプレゼントを針金でラッピングしたみたいな話があったんですが、感動したもんですよ。題名はすっかり忘れましたけど。
 作家自体の人間が暗そうだし、ジメッとした感じの小説が似合うと思うんですが、もう売れたので自分が書きたいものを書けるようになったからでしょうね、ミステリーにこだわらず、軽くて明るそうな小説書いていらっしゃいます。
 それが私なんかに言わせると、ネクラが無理に躁状態になってはしゃいでるみたいな感じがして、痛いんです。
 まあ、云えた義理じゃあ、ないのですがね。

 あらすじ。
 浅草にあるバー「if」。
 深夜ラジオのパーソナリティをしている桐畑恭太郎は、毎晩ここに通う。
 美人で包容力のある輝美ママ、そしてカウンターには常連客であるキャバ嬢の百花、ゲイバーのホステスをしている超ハンサムなレイカ、害虫駆除会社の社長兼営業マン兼事務員である石之崎、仏壇職人の重松が今日も彼を迎える。
 ラジオで喋っているときと違い、恭太郎はここでしか女性と会話できない。
 マイク越しの渋い声とは裏腹に、彼の容姿はチンチクリンだ。34歳でいまだに童貞である。
 そんな彼が、ひと目で恋に落ちた。
 雨の降る夜、ifに突然ずぶ濡れで入ってきた女性に・・・
 彼女の名は三梶恵、24歳。恭太郎のことを「キモイ」と言った初恋の相手に似ていた。
 恭太郎の恋を叶えようと頑張る常連客たち。
 しかし逆に企みがバレて、何やら謎がありそうな恵に、貸しを作ってしまう。
 恵の謎、それは住宅メーカーを経営していた父が、悪徳廃棄物処理業者に騙され、会社が倒産して首吊り自殺したことだった。彼女は、父の敵を討つべく、悪徳産廃業者への復讐を計画していたのだ。
 恭太郎はじめifの面々は、ヤクザ風の男を追いかけたり追いかけ回されたりと、危ない橋を渡りながら立ち回りを演じることになるのだが・・・

 なんだか既視感のある物語でして、何度も読んでいないことを確認しながら読みました。
 まあ、2015年の刊行ですが、新生道尾秀介の範疇にモロはいる作品ですね。
 重くてジメッとしたところがなくて、ポップな調子で進みます。
 道尾秀介はあんがい女性を描くのが巧く、恵はキャラクターとして生き生きしていました。
 ですから、彼女が登場してからのしばらくは楽しく読むことができました。
 反対に、恭太郎の設定は不自然でしたね。いくらチンチクリンでも34歳で童貞はないわ。
 不自然なのは恭太郎だけでなく、他にもおかしかった。ラストもドタバタしたまま終わっちゃたし。
 新聞連載だったそうですが、ほんと、たったこれだけの単純なストーリーで、これだけの分厚いボリュームに膨らませていいものなのかと思いました。
 またしばらく道尾秀介の作品は休憩ですなあ。


 
 
 

 

「死と砂時計」鳥飼否宇

 第16回(2016年度)本格ミステリ大賞受賞作です。
 死刑囚ばかりを収監した監獄を舞台に、発生する不可解な事件を解決する連作ミステリー。
 あまりこういうジャンルが得意ではない私も、ラストではグッときました。
 その感想は後ほど。

 とりあえず、あらすじ。
 舞台設定は特殊ですね。独裁者が支配する中東の小国の、砂漠の真ん中にある監獄が舞台。
 監獄の名前は、首長国の名前そのままでジャリーミスタン終末監獄。
 ここには、約6千人の、世界中から集められた死刑囚ばかりが収容されています。
 石油の枯渇を見越したジャリーミスタン首長国の生きる道として1990年に始まったこのビジネス。
 世界では死刑制度への反対圧力が強まり、極刑の判決を受けながらも執行されず、あたかも終末期介護施設のように死刑囚を国民の税金で扶養している状態でした。これでは、そのうち収容所がパンクしてしまう。これはたまらん、と中東で新たに始まった「死刑執行代打します」のアイディアに、各国が飛びついたのです。
 ただし、年間400人の死刑が執行(5種類から選べる)されていますが、その確定は収監順ではなくランダムであり、独裁者の首長であるサリフ・アリ・ファヒールの気分によって人選がなされているという噂があります。
 死刑囚はここに収監されると、まず警備のためにマイクロチップを体内のどこかに埋め込まれ、唯一の監獄内公用語であるジャリーミスタン語を強制的に習得されられます。しかし、一日8時間の労働の他には、これといった束縛もなく、比較的自由に生活ができます。望めば酒もタバコも可能です。そのため、受刑者同士の揉め事もよく発生しますが、重罪を犯せば問答無用に処刑場送りとなります。
 主要なキャラクターは、両親を惨殺した罪で死刑になった日系アメリカ人青年のアラン・イシダ。
 そして監獄最長老の80歳超で、牢名主のような存在であるドイツ系ルーマニア人のシュルツ老。
 シュルツについては過去は謎ですが、世界を破滅に導こうとした過去があるとのもっぱらの噂です。
 知恵者であり、監獄で起きた様々な不可解な出来事を解決していきます。
 アランは、その助手役で、まるで孫のようにシュルツに付き添い、事件解決の幇助をするのです。
 章ごとに独立した事件は、6篇。
 密室の独房で死刑執行前日に受刑者が殺されていたり、男と接触があるはずのない女囚が妊娠したりといった事件を名探偵よろしく解決していくわけです。もっとも探偵役は罪を犯した死刑囚ですが・・・
 ラストの企みに直結する、アラン自身を主人公とする最終章だけは特殊設定となっています。

「魔王シャヴォ・ドルマヤンの密室」
 亡命アルメニア人のシャヴォと、日本人のスグル・ナンジョウのふたりの死刑確定囚が、死刑執行を数時間後に控えた独房で、何者かに刃物で惨殺された。看守長から事件解決を依頼されたシュルツは、アランを助手役として連れていく。
「英雄チェン・ウェイツの失踪」
 伝説の英雄と監獄内でいわれる中国人のチェン・ウェイツ。彼は、半年前にこの警戒厳重極まりない砂漠の監獄から脱獄した唯一の死刑囚である。彼はどのように脱獄したのか? そして今どこに潜んでいるのか?
「監察官ジェマイヤ・カーレッドの韜晦」
 監獄では1年に1度、獄卒の違法行為を取り締まる監察官がやってくる。退職間近のベテラン監察官カーレッドは、第1収容棟担当の獄卒ムバラクの非行を監察している途中、謎の死を遂げる。
「墓守ラクパ・ギャルポの誉れ」
 死刑執行された遺体を墓に埋める労役を一手に担うチベット人のギャルポ。国家反逆罪に問われたという彼は年齢不明でジャリーミスタン語も一切解さない。あるとき、受刑者のひとりがギャルポが墓を暴いて遺体を食っているのを目撃したと言い出す。
「女囚マリア・スコフィールドの懐胎」
 男子禁制の女囚居住区で、あろうことか収監2年目の女囚が妊娠したという。
 謎を解くべくシュルツと共に初めて女囚居住区に足を踏み入れたアランは、そこで思いがけぬ人物に出会う。
 妊娠したという女囚は、幼馴染のマリアだった。
「確定囚アラン・イシダの真実」
 2019年3月2日。この監獄にきて3年、ついにアラン・イシダの死刑執行が確定した。
 4日後に迫る執行に備えてアランは独房に移動し、面会にきたシュルツに促されるまま過去の罪を振り返る。
 両親を惨殺したとして死刑になったアラン。しかし、大部分は濡れ衣だった。
 アメリカ国立感染病研究所で働く生物学者の母親は、シングルマザーとしてアランを出産し、その後再婚した。
 アランは実父を知らない。運命の日、実父から届いたと思わしき母親宛ての手紙は、彼と母親、義父を崩壊へと誘う導火線だった。

 本格ミステリというのがどういう定義なのかよく知らない私ですが、まずまず楽しみました。
 終末監獄の設定は特殊であるようですが、世界に実物はないにせよ、あってもSFではないですね。
 グアンタナモとか、似たようなもんじゃないの?
 密室も作りやすいし、不可解な事件の想定もしやすいし、閉鎖空間なので「まぎれ」も防ぎやすいし、クローズドサークルでありながら実はそれ自体が国際的な施設ですから間接的に世界と繋がっているという、いいことづくめのような気がしました。
 それぞれが独立した話でありながら、最後の大団円にじわじわと持っていく展開もなかなか。
 すべてはエピローグの最後の一行に集約されますね。あれがすべてですね。
 結局は、死刑囚になるような人間だった、ということです。ハジ医師も殺してますし。
 自分の命を賭して息子を救った勇敢な父ではありません。
 彼の望んだことはただひとつ、彼の唯一の息子であるTSウイルスの拡散でした。
 アランがウイルスキャリアでなければ、はたして助けたでしょうか。
 アランが独房にいた4日間、ひたすら彼をいやウイルスを救おうと企んでいたシュルツの闇が垣間見えてちょっと怖いです。


 
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